のどの病気
アデノイド増殖症および口蓋扁桃肥大
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【アデノイド増殖症および口蓋扁桃肥大】

1.概念および病態生理
 鼻の奥にあるアデノイド(咽頭扁桃)や口の中にある口蓋扁桃等のリンパ組織は3〜6歳にかけて生理的な増殖・肥大の時期を迎え、その後徐々に萎縮して小さくなり、アデノイドの場合、思春期頃にはほとんど痕跡程度にしか残らなくなります。その過程で、これらのリンパ組織が生理的範囲を超えて増殖・肥大し、生体に何らかの不都合な状態を生じるに至った場合に、アデノイド増殖症および口蓋扁桃肥大という疾患と認識して、治療にあたることになります。したがって、これらの組織が単純に大きいだけで、他に何らかの臨床症状を伴わない場合には、治療の必要はないと考えて構いません。

2.臨床症状
 アデノイド増殖症は、腺様増殖症、咽頭扁桃肥大症、あるいは単にアデノイドとも言われ、その症状としては、
1) アデノイドが鼻咽腔を閉塞することによる鼻閉、閉鼻声、いびき、口呼吸
2) アデノイドの圧迫で耳管機能不全を生じることによる滲出性中耳炎
3) その他、鼻腔の通気を妨げることで、間接的に鼻副鼻腔炎を悪化・遷延させたり、アデノイドの炎症が経耳管的に中耳に及んで反復性中耳炎の原因となる可能性
などが挙げられます。

 アデノイドによる上気道狭窄が高度になると、閉塞性の睡眠時無呼吸をきたしたり、無呼吸に至らない場合でも、睡眠が浅くなり、睡眠中に激しい体動を生じ、夜驚症、夜尿症の原因となることもあります。夜に充分な睡眠がとれなくなれば、朝の寝起きが悪くなったり、昼間もボーとして集中力が低下することが考えられます。

 また、乳児期には特に鼻呼吸が重要ですので、アデノイド増殖症による鼻閉から、重篤な呼吸困難を生じたり、哺乳の際に息苦しくなって充分なミルクを摂取することが出来なくなる哺乳障害・栄養障害の原因となることもあります。

 このような重症の呼吸障害が長期間わたり続く場合には、体の成長障害をきたしたり、口を開き、顔全体の締りが悪くなる特有のアデノイド顔貌を呈することが、さらには循環系に負担をかけて肺高血圧症や心不全等の危険な合併症を生じることもあります。

 口蓋扁桃肥大による症状としては、
1)中咽頭部の気道を狭窄することによる、いびき、無呼吸
2)中咽頭の空間が狭くなることによる、食物の通過障害

が挙げられます。

 口蓋扁桃肥大に起因する無呼吸症状は、アデノイドとほぼ共通であり、さらに、アデノイドと口蓋扁桃の増殖・肥大は同じような経過を辿ることが多いため、一方が大きい場合には、他方も同様である例がほとんどで、睡眠時無呼吸に対する手術などの際には、アデノイドと口蓋扁桃の両者の手術が同時に行われることが多いようです。

 なお、アデノイド増殖や口蓋扁桃肥大に至る要因として、過去および現在に扁桃腺炎を繰り返していたことが想像されます。急性扁桃炎を頻回に繰り返し(年4〜5回以上)日常生活での支障が大きい場合(慢性扁桃炎または習慣性扁桃炎)、あるいは扁桃に持続的な炎症が存在し、そのために扁桃以外の遠隔臓器に様々な症状(掌蹠嚢疱症、胸肋鎖骨過形成症など)を生じる場合(扁桃性病巣感染症)にも、積極的な治療を考慮します。

3.診断方法および診断基準
 アデノイド増殖症の診断方法および診断基準
1) 臨床症状からの推測
2) 側面単純X線撮影
3) 鼻咽腔ファイバー
4) CTまたはMRI


 アデノイド増殖症の診断は、前述した臨床症状のみでもかなりの確率で可能と考えられますが、診断の確定のためにX線やファイバー等を行うことになります。ファイバーはX線被爆を避けられるという利点はあるものの、小児科診療では患児の協力を得ることが困難であり、特別な場合を除いてX線で診断を行っています。CTやMRIが必要になることは通常は考えられませんが、別の理由でこれらを行った際にアデノイド増殖が指摘されることがあります。

 X線フィルム上での計測による診断基準も報告されていますが、臨床的には鼻咽腔の空間に占めるアデノイドと気道の割合で大きさを判断して問題ないと考えられます。アデノイドが鼻咽腔の空間の半分以上を占めているようだと、滲出性中耳炎や睡眠時無呼吸等の臨床症状を引き起こしている可能性がでてきます。

 口蓋扁桃肥大の診断方法および診断基準
1)視診
2)間接喉頭鏡検査または喉頭ファイバー
3)側面単純X線撮影

 口蓋扁桃の大きさ(肥大の程度)の診断は、通常は口腔内の視診で可能となります。口蓋扁桃肥大のMackenzieの分類に従って、前後の口蓋弓よりわずかに突出する程度の沒x、左右の扁桃が正中で触れ合う程の。度、その中間の度に分類しています。しかしながら、口腔内の視診ではそれほどの肥大ではないにもかかわらず、舌の陰に隠れた口蓋扁桃下極の肥大によって無呼吸を生じている例もあり、間接喉頭鏡検査や喉頭ファイバーでの確認も重要となります。また頚部の側面単純X線でも、扁桃が描出されて診断可能な例があります。

4.治療方針
1) 保存的治療
2) 外科的治療

 急性の炎症で一時的にアデノイドや口蓋扁桃が腫脹しているような場合には、抗生剤や消炎剤の投与、血管収縮剤の点鼻で、症状を軽減することも可能です。
 保存的治療での症状の軽快が不十分な場合には、外科的治療(アデノイド切除術および口蓋扁桃摘出術)に進むことになります。通常、手術は全身麻酔下に行われ、術後約1週間の入院を要することになります。

5.診断および治療方針の決定に際して留意すべきこと
 アデノイドや口蓋扁桃の大きさはX線や視診で判断しますが、治療の必要性に関しては、必ずしもアデノイドや口蓋扁桃そのものの大きさで決定するのではなく、アデノイド増殖症や口蓋扁桃肥大に起因する滲出性中耳炎や反復性中耳炎、睡眠呼吸障害、摂食障害等の合併の有無やその重症度によって、治療方針を決定することになります。

 滲出性中耳炎の重症度は鼓膜所見および純音聴力検査または乳幼児聴力検査、ティンパノメトリーなどで行い、保存的治療を進めながら鼓膜切開等を適宜行って、なおかつ難治な場合にアデノイド切除術を含めた外科的治療を選択することになります。

 睡眠呼吸障害(睡眠時無呼吸)も、睡眠時の呼吸状態の検査を行ってその重症度を診断することになりますが、脳波を含めた総合的な検討は一般の施設では困難な場合が多く、通常は睡眠中の酸素飽和度のモニターと睡眠状態の観察で行っている例が多いようです。また、アデノイドや口蓋扁桃は炎症状態の時には通常より大きくなるため、特に無呼吸に関しては、感冒等をきっかけにして症状が急速に増悪する可能性があることを認識している必要があるものと考えられます。

 さらに、アデノイドや口蓋扁桃の大きさは、3〜6歳にかけて生理的な増殖・肥大の時期を迎えることにも留意する必要があります。つまり、3歳の時点で既にこれらの起因する何らかの症状を来たしていた場合には、今後生理的な肥大に伴って症状が増悪・持続する可能性が高く、仮にその時点での症状が高度でなかったとしても、積極的な治療を選択するのが望ましく、逆に6歳であれば、今後リンパ組織の自然経過での萎縮により症状が軽快する可能性があります。診断および治療方針の決定にはこのような年齢的な要因を加味して検討する必要があると考えられます。