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声門下狭窄:先天性、後天性
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【声門下狭窄:先天性、後天性】

(小児の耳鼻咽喉科診療より抜粋;医療関係者向けの文章ですので、ご了承下さい)

1.はじめに

 先天性・後天性声門下狭窄は、一般耳鼻咽喉科臨床において遭遇する機会は比較的少ないと考えられるが、呼吸障害は生命に直結する問題であり、その対処を誤ることは許されない。特に近年、新生児未熟児医療の進歩にともない、多くの重篤な合併症のある生命が救われる一方で、救命のために行われた気管内挿管が、そのまま抜管困難となる例も増えてきている。その一部は声門下狭窄が原因である可能性があり、声門下狭窄の診断および治療に耳鼻咽喉科医が果たすべき役割がより重要になってきている。

2.症状

 吸気性喘鳴、陥没呼吸、呼吸困難、哺乳困難などが考えられる。また、抜管困難症例も声門下狭窄が原因となっている可能性がある。
 先天性症例では、当然生直後あるいは生後間もない頃からこれらの症状が出現する例が多いが、時に生後2〜3ヵ月・体重5Lになって症状が目立ってくる例や、幼児期になって感染や手術をきっかけに挿管して抜管困難となり発見される例もある。
 軽症例を除き、通常は気管内挿管を要し、最終的に気管切開に至る例が多い。気管内挿管の際には、通常サイズより細径のチューブしか挿管出来ない、あるいは通常サイズでは空気のリークが認められないことになり、そのことが、声門下狭窄の存在を疑う大きなポイントになる。
 後天性では、交通事故、気道熱傷、薬物誤嚥などの事故に起因するものが大部分である。


3.検査方法

3-1) 画像検査

(A) 頚部単純X線
正面および側面撮影の単純X線は、声門下のみならず、鼻咽腔から喉頭、気管にいたる気道の状態を評価する方法として有用である。
(B) CT、MRI
CTやMRIの検査も、声門下狭窄の診断に有用と考えられるが、乳幼児でこれらの検査を行う際には、当然鎮静が必要になり、呼吸状態の不安定な患児に眠剤を投与して検査することには大きな危険があることを十分認識していなければならない。また、声門下狭窄と鑑別すべき疾患を確認する検査としては、CTやMRIの有用性は極めて高いと考えられる。
(C) 超音波検査
超音波検査は、非侵襲的で痛みもなく、通常は鎮静も要さず、放射線被爆もないことから、小児での検査に適していると考えられる。小児では喉頭の軟骨が骨化していなため、喉頭の内腔から声門下の状態の観察にエコーが有用と考えられる。さらに声帯麻痺のような機能的異常の診断にも有用であると考えられる。
(D) その他の画像検査
食道造影や胸部血管造影も、鑑別すべき疾患の診断には有用であるが、声門下狭窄の診断においては必須の検査でなくその有用度は低い。

3-2) 喉頭ファイバー

 喉頭から声門下を直接観察できる方法として、喉頭ファイバーは声門下狭窄の診断において最も有用、かつ最終的・決定的な評価方法となっている。なお、小児では声帯の動きが早く、肉眼のみの観察では詳細な検討が困難な場合が多く、ビデオで記録して観察・評価することが望ましい。

3-3) その他の検査

 GERの存在が長期的に声門下狭窄につながる例があり、その存在が疑われるようであれば24時間pHモニター等のGERに関する検査を行うことが望ましい。また、年長児であれば呼吸機能検査も、気道の状態の評価方法として有用と考えられる。


4.診断手順

 臨床症状から何らかの気道狭窄症状が疑われれば、上気道から下気道まで、機能的・器質的疾患の有無を検索する必要がある。
 外来レベルの診断として有用なのは、頚部の単純X線写真(正面、側面)と喉頭ファイバーである。声門下の気管の狭窄は、多くの場合、単純X線で描出可能である。覚醒状態の局所麻酔下の喉頭ファイバーでは、声門下の状態までを十分に観察することは困難な場合もあるが、声帯麻痺の有無を確認する上でも必須の検査と考えている。
 CTやMRIの検査も声門下狭窄の診断に有用であるが、前述のように、鎮静に際しての呼吸状態悪化の可能性に十分留意する必要があり、必ずしも外来レベルで行うべき検査とは言えず、むしろ入院後に十分なバックアップ体制を準備した上で行うべきと考えられる。
 なお、先天性の声門下狭窄症例では、生直後の呼吸困難症状のために挿管され、抜管困難となったという状況が多いと考えられる。これらの症例では、挿管チューブの存在のために、単純X線やCT、MRI等の画像検査では狭窄そのものの診断は困難となる。先にも述べたように、月齢あるいは体格相応の気管内挿管チューブが入らなかったり、リークが認められない場合には、声門下狭窄が疑われることになる。なお、乳幼児の気管内挿管に際して、必要以上に太いチューブを使用したり、あるいは緊急時の挿管で喉頭や声門下に損傷を与えた場合には、挿管に起因する声門下狭窄を生じている可能性もある。
 最終的診断にはラリンジアルマスクによる全身麻酔下に、喉頭〜声門下をファイバーで直接観察することが重要である。あるいは麻酔科医師の立ち会いの下で手術室で鎮静の上、抜管し、声門下の状態をファイバーで確認する方法も考えられる。この時注意すべき点としては、抜管直後はもともとあった挿管チューブがステントとして機能していたために、抜管直後の声門下が本来の状態より拡大して見える可能性があることである。十分な広さがあると判断してそのまま抜管して経過を見ていると、数時間後に徐々に呼吸状態が悪化し、再挿管が必要となった例を少なからず経験している。このような例の再挿管直前のファイバー所見では、声門下が最初の観察時点より明らかに狭窄しているのが確認されることがほとんどである。


5.鑑別診断および合併疾患

 小児で吸気性喘鳴、陥没呼吸、呼吸困難、哺乳困難などの症状を引き起こす可能性のある疾患の鑑別が必要になる。具体的には喉頭軟弱症や舌根・喉頭嚢胞、喉頭横隔膜症、声帯麻痺、声門下血管腫などが挙げられるが、単純な新生児鼻炎でも呼吸症状を引き起こす可能性がある。前述した検査で、声門下狭窄の確定診断を行うのと平行して、これらの疾患の鑑別を行うことになる。そのなかで、声帯麻痺の鑑別が特に重要であり、かつ困難でもある。新生児期あるいは乳児期のファイバーでは、声帯麻痺の存在の確認に迷う例が少なくない。また、すでに挿管されている症例では、覚醒状態でのファイバーを行うことが困難であり、気管切開後でなければ麻痺の診断が出来ないことになる。実際、声門下狭窄と声帯麻痺の合併症例は多く、声帯麻痺合併の有無は、声門下狭窄の治療の予後(カニューレ抜去の可能性)に大きな影響を与える因子となる。また、喉頭や気管全体の狭窄を認める症例でも、その治療は相当困難となる可能性が高い。

6.治療方針

6-1) 経過観察
 狭窄の程度の軽い例では、そのまま保存的経過観察で成長を待つうちに、自然と症状が軽快する例がある。しかしながら、感冒等をきっかけに、呼吸症状が突然に悪化する可能性があることに注意する必要がある。すなわち、小児では、声門下狭窄を認めない症例でも、急性声門下喉頭炎等に起因する呼吸困難を容易に来すことがあり、声門下狭窄を基礎疾患として持っていれば、軽微な感染や炎症でも重篤な呼吸困難につながる可能性がある。
6-2) 気管切開術
 精査の結果、狭窄程度が強い例あるいは抜管困難な症例では、気管切開を行って気道の確保を行い、成長を待って根治手術を考えることになる。また、小児では成人と異なり喉頭腔に十分な余裕がないため、後述する喉頭顕微鏡下手術を行う際にも、経口挿管での手術はほぼ不可能であり、治療上も気管切開が不可欠となる。
6-3) 喉頭顕微鏡下手術
 後天性の声門下狭窄で、声門下の瘢痕・肉芽等が原因の場合、あるいは先天性でも軟部組織の肥厚が原因となっている例では、喉頭顕微鏡下手術で根治が得られる可能性がある。手術に際しては、従来の鉗子を用いる方法以外に、レーザー(KTP、CO2)を併用する例があるが、声門下狭窄の治療におけるレーザーの有用性については必ずしも意見の一致は得られていない。
6-4) 喉頭截開手術
 喉頭截開により、喉頭・気管内腔の狭窄部分を切除する、あるいは肋軟骨を移植して内腔の拡大をはかる方法が考えられる(図-9)。喉頭顕微鏡下手術では対応が困難な輪状軟骨そのものの肥厚による声門下狭窄や、高度の狭窄症例が対象となる。患児が3〜5歳程度に成長してから手術を行うことになる。施設によっては、乳児期に、anteriorあるいはposterior cricoid splitによる一期的手術で治療する例もある。
6-5) ステント留置
 Tチューブ、Yチューブ、あるいはコアモルドなど各施設で様々に工夫された材料を、気管内腔の癒着防止および内腔の空間の維持を目的として留置する方法である。喉頭顕微鏡下手術や喉頭截開手術に合わせて行われることが多く、留置期間は数週から数カ月まで様々に言われている。
 これらの方法を、症例によって、あるいは年齢・時期によって様々に組み合わせて治療を進めることになるが、最終的には、小学校入学までにカニューレを抜去することが一つの目標であると考えている。
6-6) カニューレ抜去
 カニューレ抜去を考慮する条件としては、構造的に声門下の空間が十分に拡大されたことは勿論であるが、それ以外に、発声が良好であること、嚥下が良好であることの機能面の2つの要素も重要と考えている。特に嚥下に関しては、日常的に誤嚥が存在する状況下では、いったんカニューレ抜去が可能であったとしても、早晩、誤嚥性肺炎を繰り返すことから再度の気管切開が必要になる可能性が極めて高いと考えている。また、長期にカニューレを装用していた症例では、カニューレ直上の気管内に肉芽を生じている例も多く、カニューレ抜去前にはこれを予め切除しておく必要がある。
 実際のカニューレ抜去の手順としては、ファイバーで声門下腔が十分拡大していることを確認した上で、まず通常使用しているカニューレを、1〜2サイズ小さいものに変更し、昼間はカニューレ孔をテープ等で塞いで呼吸が苦しくならないかを確認することから始める。これで問題なければ、入院の上カニューレを抜去し、その後は数日から1週間程度は特に夜間を中心としたSpO2と呼吸状態の検査を入院のまま行い、問題がないことを確認した上で退院とする。その後も定期的に外来でファイバーおよび頚部単純X線による経過観察が必要なことは言うまでもない。
6-7) 気管孔閉鎖
 カニューレ抜去後、気管孔は自然閉鎖する例もあるが、長期にカニューレを装用していた例では、上皮が気管近くまで入り込んでいるため、穴が小さくなっても完全に閉鎖することはないと考えられる。最終的には、この気管皮膚瘻の状態を切除縫合する必要があるが、呼吸困難症状が再燃する可能性を考えて、カニューレ抜去直後はそのまま放置し、1年程度問題なく経過したことを確認した上で手術を行う方が安全である。カニューレ抜去は、本人の体調が良い時に行なうのが通常であり、その時点では呼吸に問題がなくとも、感冒や気管支炎等で喀痰が多くなった時に呼吸困難症状が出現する可能性も考えなければならない。カニューレ孔が残っていれば、そこから痰の吸引や、最悪の場合小さなサイズのカニューレの挿入が可能であり、万が一のための安全弁として、すぐには縫合閉鎖を行なわず、1年程度の経過のうちに何回か感冒症状を経験し、その際にも問題がなかったことが確認されて初めて、気管孔閉鎖を考えるのが望ましいと思われる。